食品サンプルとは?
「食品模型」や「料理見本」とも呼ばれる食品サンプルは、飲食店の店頭や店内に陳列される、料理をリアルに再現した模型です。
料理の見た目を視覚的に細部まで伝えることができ、商品名や価格の表示と組み合わせることでメニューとしての役割も果たします。
一目で「どんな料理か」「どのくらいの量か」「どんな食材が使われているか」がわかるため、訪日外国人向けの店舗や海外飲食店でも近年注目されています。
1点から作れるオーダーメイドの技術
同じ料理名でも、盛り付けや具材の配置、色合いはお店ごとに異なるもの。
デザインポケットでは、そうしたこだわりを反映できるよう、1点からのオーダーメイド制作に対応しています。
お預かりした料理写真やご要望をもとに、熟練の職人がひとつひとつ手作業で再現。料理と同じサイズ(等倍)で作ることはもちろん、“おいしそうに見えること”を重視して、リアルかつ魅力的な食品サンプルをお作りしています。
日本が誇る、食品サンプルの歴史 ~ 大阪発祥の文化を、世界へ ~
■ 大正〜昭和初期:商業美術としてのはじまり
約100年前、食品サンプルの制作は各地で始まりましたが、商業美術として体系的に発展したのは大阪。
百貨店の食堂に置かれたことで、全国に広がっていきました。
■ 1939年 第二次世界大戦と岐阜への疎開
戦争により蝋は軍事物資として統制され、サンプル製作が困難に。
大阪の職人が岐阜県郡上八幡に疎開し、供物模型の制作などで技術を守り抜きました。
その影響で、現在も日本の食品サンプルの半数以上が郡上八幡で製造されています。
■ 1950〜60年代:全国へ広がる技術
戦後、職人たちは各地に食品サンプル会社を設立。
パーツ専門、果物専門、医療模型へ応用するなど、技術が多様に発展しました。
この時期に「料理のサンプル」から**「食品サンプル」**という言葉が定着していきました。
■ 1970〜80年代:蝋から樹脂へ
ショーケースの照明の熱により蝋が溶ける問題が発生し、各社が合成樹脂への転換を進めました。
このため、蝋を使った技術は現在ほとんど失われています。
(※デザインポケットでは蝋製の製作には対応しておりません。)
■ 1990〜2000年代:衰退と危機
バブル崩壊と印刷技術の発展により、食品サンプルの需要は減少。
職人の多くが事業をたたみ、技術の継承が途絶える危機を迎えました。
■ 2010年〜現在:再注目と新たな展開
食品サンプルは単なる飲食店のメニュー表示を超えて、雑貨やお土産、さらにはアート作品としても注目を集めており、特に訪日外国人の間では日本文化の一端として再評価されており、ユニークな土産物としても大変人気を博しています。
しかし、職人の多くは高齢化し、業界団体や標準化された教育制度もないのが現状です。
■ デザインポケットの取り組み
この日本独自の文化を未来へ繋ぐため、デザインポケットは以下の取り組みを行っています:
日本食品サンプル普及協会の設立
日本初の長期養成制度「食品サンプル制作技術者養成スクール」の運営
食品サンプルを世界に広め、グローバルスタンダードとして確立させるべく、活動を続けています。
モノづくりに込めた、私たちの想い
食品サンプルには、ただの模型以上の“心”が込められています。
瞬間をかたちにする「モノづくりの心」
一瞬の盛りつけ、食材の動き、美味しさの絶頂──その一瞬を再現する技術と情熱。
飾って捨てたくないという「もったいないの心」
食べ物に対する敬意。無駄にしない、残したくないという日本人ならではの感性。
見ただけで伝える「おもてなしの心」
言葉が通じなくても、ひと目で料理の内容と量を伝えられる、やさしさと配慮。
デザインポケットは、こうした心があったからこそ、食品サンプルという文化が日本に広まり、受け継がれてきたのだと考えています。
そして何よりも、この文化を守り続けてきたのは
「あきらめない心」。
多くの困難に直面しても、自らを奮い立たせ、知恵と仲間の力で乗り越えてきた。
その歴史こそが、食品サンプルの価値を物語っています。
私たちデザインポケットは、この文化と誇りを、
これからも愛をもって未来へ育んでいきます。